◆淀川生活４日目◆ ◆偽島◆

第４川
　淀川と黒い猫


島に来てから一人だった淀川に、
一緒に歩く友達が出来ていた。
真っ黒い毛皮に金色のつぶらな瞳。
中々可愛い奴だ。
名を”液晶”というらしい。
正直言って掃除の手伝いには期待できないが、
淀川は元々動物好きなので気にしなかった。
寧ろ大切なのは共通の趣味がある事である。

液晶は猫でありながら哲学者であった。
考えることは実に深い。
淀川とは良い話し相手になった。
もっとも普通の者には「にゃーん」としか聞こえないので、
恐らく淀川はへんな風に見えて居る事だろうが。



さて、そんな友達の出来たある日の事。
いつものように淀川と液晶が話をしていた。

「にゃーん」
「お、何や、お前、ソレは昨日決着ついたこっちゃないか。」
「にゃーん」
「いやいや、そう言うてもやな、ソレはほれ、ちくわの穴が…。」
「にゃーん」
「ソレは自分で言うた事やないか。」

実際ここまでは昨日の通りのやり取りであった。
だが。

「にゃーん」
「ん？」
「にゃーん」
「！　おぉ！そうか！」
「にゃーん」
「しかしそうか、そう言うたらそうも取れるなぁ…」
「にゃーん」

なんと言う事だろう！
まさか猫の身で液晶はそんな事を考えていたのだ！
淀川はますます液晶が気に入ってしまった。

「これからも仲良うしような。」
「にゃーん」
「はは、そやな。」
「にゃーん」
「うんうん。」

皮肉の効いたセリフと共に、友情を深め合う１本と１匹であった。